こんにちは。 田園調布で、書道教室を主宰しております、佐藤清景(さとうせいけい)です。
「ジャパンエキスポパリ2022」渡航記も、いよいよ今回で最終回となります。長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
【ジャパンエキスポパリ2022渡航記 シリーズ一覧】
- vol.1:30年ぶりのパリと渡航の壁
- vol.2:設営前夜、パリのスーパー買い出し
- vol.3:設営とイベント初日、立ち込める暗雲
- vol.4:少女との出会いと初めて作品が売れた日
- vol.5:言葉を超えて伝わる世界と完売の喜び
- vol.6:国や宗教を超える自由な世界へ【完結編】(本記事)
大盛況だった2日目の興奮を一度リセットし、3日目、そして最終日に向けて気持ちを整えます。

3日目の朝、ふと自分の中に「どうせなら全部売り切って帰りたい」という前向きな意欲、悪く言えば「欲」のようなものが湧いてきていることに気がつきました。
「今日は人が一番集まる土曜日だから……」と期待が膨らんでしまったのです。
ちょっと話はそれますが、パリ滞在中にとても素敵だなと感じたのは、街中で人と目が合うと、男女問わず誰もがニッコリと微笑んで目で挨拶をしてくれることでした。お互いを尊重し合うようなその仕草が、とても心地よく心に残っています。
さて、会場へ戻り「欲が出るといけない」と自分を静かに制しながら、平常心でお客様をお迎えしました。通訳さんとの息もぴったりになり、3日目は2枚、最終日は3枚の作品をお迎えいただくことができました。
最終日の奇跡。「やっぱりこの赤が欲しい」
最終日にとても印象的な出来事がありました。
午前中、彼と一緒に来場された若い女性が、ブースに飾ってあった最後の1枚の「赤のカラー般若心経」をとても気に入ってくださいました。

「これが好きなの」と赤を指差す彼女に、彼が「素敵だけれど、少し値段が高いんじゃない?」と話しかけています。結局、「欲しいけれど、少し考えてまた後で来ます」と言って一度ブースを離れていかれました。
実は、この「赤の作品」を気に入ってくださる若い女性とのやりとりは、この4日間で何度も目にした光景でした。そして不思議なことに、一度悩んで去られた方は、必ずまた戻ってきてくださるのです。
最終日は撤収作業のため通常より早くブースを閉めなければならず、「もう来ないかしら、いや、きっと来てくださるはず……」とソワソワしながら待っていました。
すると16時を過ぎた頃、会場の向こうから真っ直ぐ私のブースを目指して歩いてくる彼女の姿が見えました!
「やっぱり買って帰るわ。でもこの赤は予算オーバーだから、こちらの黒にするわね」とおっしゃる彼女。赤を愛おしそうに見つめる姿を見て、私は彼女にどうしてもあの赤を迎えてほしいと思いました。
「赤が欲しいのですよね?今日は最終日ですし、特別にお値下げしますよ」とお伝えすると、「えっ、じゃあ赤にする!」と飛び上がって喜んでくださいました。こうして最後の赤の作品は、彼女の元へとお嫁に行きました。

この4日間で「赤」を選んでくださった皆さんは、共通して「優しさの中に芯のある力強い瞳」をされていました。その真っ直ぐな瞳に触れられたこと自体が、私にとって宝物です。
言葉を超え、国や宗教をも超える自由な世界へ
当初の目標は「1枚でも売れたらいいな」というものでした。 それが、終わってみればなんと4日間で12枚もの作品をご購入いただくことができたのです。夢のような奇跡に、胸が熱くなりました。
撤収を終えた誰もいないブースを見つめながら、深くかみしめました。

言葉が完璧に通じなくてもいい世界がある。 作品を通して、お互いの大切な何かを共有し合える。
作品ひとつで、性別も、国境も、宗教の壁さえも軽々と超えて、自由な世界へ行ける手応えを掴めたような、かけがえのない4日間となりました。
Merci(ありがとう)、パリ。

帰国後、自分では元気なつもりでいましたが、後からドッと疲れが押し寄せてまいりました(笑)。自分の年齢も労りつつ、このパリで得た感動と学びを、これからの作品制作とお教室での指導にしっかりと還元してまいりたいと思います。
全6回にわたる渡航記をお読みいただき、本当にありがとうございました。

